半沢直樹が教えてくれた日本学術会議任命拒否の問題点

どうも、謝り屋です。

世間では今、日本学術会議の会員任命問題が話題となっています。通常であれば、推薦されたメンバーの名簿に基づき、内閣総理大臣が任命して即終了となるはずでしたが、105名の会員候補のうち6名が任命されないという異例の事態が起こりました。

改めて説明しておくと、日本学術会議とは国の学術者団体の最高峰であり、政府から独立した「特別の機関」。時の政権に対して、専門的な見地から有為で客観的な意見を述べ、政治の軌道修正を行うための組織です。

つまり、政府に対して忖度せず、正は正、誤は誤と誠実で理論的に物申せる組織でなければならないのです。

国内最高レベルの学者が知見、人物ともに優れている後任を推薦しているのですから、「学術の素人」である政治家が本来口を挟む領域ではないはず。1983年の国会審議でも当時の中曽根首相が「形式的任命にすぎません」とはっきり言っています。

にもかかわらず、菅首相は最後の最後で「任命しない」という世間の耳目を集める行動に出ました。普通はやらないことをやり、これまでの慣例を破って国民の不安をあおるからには、それなりの説明が必要でしょう。

つい先日まで毎週日曜の夜を沸かせ、最終回では総合視聴率44.1%という快挙を成し遂げたドラマ『半沢直樹』。第2話でこんなシーンがありました。

顧客を裏切り、敵対的買収を画策する会社と密かに手を組んでいた証券マンに、半沢はこう凄みます。

「欲しいのは謝罪じゃなく説明ですよ。この話がどんな形で伊佐山から持ち込まれ、どういう裏取引があるのか、全て洗いざらい話してもらおうか。時間と場所、そして誰がどんな発言をしたか、全てだ」

そう、逆説的ではありますが「謝罪で重要なのは謝罪ではない」のです。もちろん謝罪の気持ちを込めて「申し訳ございませんでした」と相手に言葉を述べることは大事なのですが、何か被害にあったとき皆さんは相手からどうされることを望むでしょうか。

それは説明です。菅首相は6名の任命拒否理由を「総合的俯瞰的な活動を確保する観点から」判断したと答えています。これは半沢から1000倍返しを食らいかねない、稚拙であいまいな回答です。

もしかすると6名の方に誰もが納得できる欠格事由があるのかもしれません。それならそれで個別具体的に説明し国民を納得させる必要があります。なぜなら日本学術会議の会員は公務員。国民の税金で成り立っているからです。そこで「なるほど!」と思わせてこそ政治家でしょう。

半沢はドラマの第4話で、仕事に対する信念をこんなふうに語っています。

一つ 正しいことを正しいと言えること

一つ 組織の常識と世間の常識が一致していること

一つ ひたむきで誠実に働いた者がきちんと評価されること

学者の本分は真理を追究することにあります。真理のプロに対して、またステークホルダーである国民に対して、真に丁寧で納得のいく説明が待たれるところです。